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創業八百年釣瓶鮨弥助が配った手拭「義経千本桜鮨屋之段」を杉並区にて買い取り致しました

義経千本桜鮨屋之段 釣瓶鮨弥助 宣伝手拭い
珍品のご紹介です。時代が定かではありませんが(わざわざ大和國とあるので相当古そう)、当代が49代目になるという800年以上もの長きにわたって暖簾を繋いで来た奈良県吉野の鮨(鮓)屋、釣瓶鮨弥助が、販促・宣伝用に配ったと思われます手拭いを買い取りさせていただいております。
海無しの奈良で鮨? ここでいうスシとは、吉野川などで捕れた鮎を使った熟れ寿司(なれずし)を指すようです。塩漬けした魚とご飯を交互に重ねて桶の中で醗酵させた大昔の一種の保存食で、江戸前握り寿司とは似て非なるもの、ある意味対極にある食べ物でしょう。
さて手拭いには、この「つるべすし弥助」が舞台となった「義経千本桜 鮨屋之段」が宣材として用いられています。浄瑠璃・歌舞伎の演目として著名なこの作品の三段目のひと幕である鮨屋之段は、場面転換が激しく非常に起伏に富んだ挿話で、容易には内容をご説明し切れませんが、源氏による平家追討に敗れ都落ちした平家一門の主家筋である平維盛を巡って巻き起こる因果応報の悲劇と鮨屋の家族の愛憎劇が入り組んだものとでも申し上げておきましょう。
ところで物語終いでは鮨屋の男連中は揃って居なくなってしまう ~重盛(清盛嫡男で維盛の父)に恩義のある店主の弥左衛門は維盛の妻子の旅立ちにお供して出奔、かき回し役を演じた息子で無頼漢の権太は怒り狂った父の刃に斃れてしまうし、弥助の名で下男として匿われていた維盛は頼朝の温情・放免を受けて出家する~ のですが、この後鮨屋の運営はどうなったのか気になります。弥助=維盛との結婚を夢見たものの身を引いた娘のお里が良い婿を見つけることが出来たのでしょうか。そりゃまぁフィクション(維盛が生き延びていたこと自体が虚構であろう)ですからノープロブレムと言われればまことにそれ迄でありますけれど。

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