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東京西荻窪アンティーク道具屋慈光の日々

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人間国宝・藤原啓の備前徳利を,ヤフオク出品中です。

藤原啓は明治32年、備前生まれでしたが、陶芸とは無縁でした。

早稲田大学英文科を中退、少年時代から目指していた文学を志し、俳句や小説作りに熱中しました。東京での12年間は波乱に富んでおり、文学を学ぶというより、人生を知ろうとする思想の放浪ともいうべき体験の連続でした。編集の仕事を通じて知りあった多くの文壇の人々との交流をはじめ、絵や音楽も学ぶなど、思いたったらすぐ実践するというバイタリティを見せていました。しかし、文学への道はついに開かれないまま強度の神経衰弱に陥り、東京暮らしを断念、昭和12年・38歳で妻子を抱えて帰郷しました。その後、友人で正宗白鳥の弟でもある正宗敦夫の勧めで備前焼を始めますが、まだ備前焼など売れない当時、地方新聞に小説や随筆を書いては生活を支えました。特殊な勘と技術を要する備前焼だけにいくつもの障害に出会いましたが、幸いにも金重陶陽が親切に指導してくれたおかげで「土で詩を書く。ペンを土にかえただけ。」の後半生を歩みだしました。金重陶陽とは互いに師弟というよりも、共に土を愛し、酒を愛する人生の友として備前焼の名声を盛り上げ、その後、共に人間国宝となりました。藤原啓の作品はおおらかで素朴。それは、藤原啓の飾らない、気さくな人柄をそのまま映していると言われています。

こちらの作品は、径×約7.5cm 高さ×約14cmで、藤原啓の代表的な造形である、胴が張った丸蕪型の徳利です。口に窯傷がありますが、ろくろの上手さや熟練の技巧ではなく、素朴な風情を楽しむ作品でしょう。只今ヤフオク出品中ですので、どうぞお見逃しなく!

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