125点の挿絵/版画が見事なダンテ『神曲』のイタリア語古書・原書(1817-1819)を買い取り致しました
ヨーロッパの文明復興=ルネサンスの先鞭をつけたひとりともいわれる13世紀末~14世紀初めのフィレンツェの詩人(且つ哲学者、政治家)ダンテ・アリギエーリの名前はどなたでもご存じでありましょうが、その(読まれざる)代表作『神曲』のイタリア語原書(La Divina Commedia di Dante Alighieri con tavole in rame 4vols 1817-1819)を買い取らせていただきました。
長辺が50センチになんなんとする大判でとても重い4冊揃いでして、フィレンツェにおいて1817~1819年に刷られた、アンコラ Ancora 版・本と通称されるもののようです。
当古書がユニークで貴重だと思われますのは、ダンテの詩文そのもの以上に、19世紀初頭に活躍した二人の写実~ロマン主義の画家によって描かれ銅版画から印刷された、総計125点に上る挿入画ゆえとなりましょう(全3部[3巻]に加えての、ダンテの伝記や作品解題を収めた第四巻も、イタリア語を解せますれば価値がある・重要だとなるのでしょうか)。
1・2巻を担当しているのが、ミラノ生まれのルイージ・アデモロ Luigi Adamollo [Ademollo]、両聖書の諸場面をモチーフとした、カラフルで繊細さも備えたフレスコ画や版画が欧州では評価が高いとみられますが、本邦ではほとんどその名が知られていないようです:
第3巻の41点は、同様に日本での知名度は低いシエナ出身フランチェスコ・ネンチ Francesco Nenci、宗教画にとどまらず、ホメロスの作品をテーマにすることも好んだようです:
以上、版画の一部を取り急ぎ抜粋し掲げてみました。日本で『神曲』といえば挿絵はギュスターヴ・ドレ(フランス人です)のものが決定版とされておりいっそそれしかないかのような扱い・風潮でありますが、実際のところドレは上の両名のふた世代遅れのひとであり、まず間違いなく当書に掲載された版画をつぶさに研究し尽くしていたであろうと考えるのが自然でありましょう。ドレの精緻・細密を極めた版画に比べますと、確かにこのふたりの作品は素朴でいっそ牧歌的・中世的な趣きさえ漂いますが、美術・芸術・出版(の歴史)を研究する上で興味の尽きない価値ある典籍であるとは申せそうです。
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