日本画家 清水規の作品 『朝富士』を中野区にて買い取りさせていただきました
繊細かつ緻密な描写と、明瞭鮮烈な色使いで、日本画の可能性を1980年代より追求し続けております清水規(1962~; 1996年からは自身のアトリエを弊社近隣である練馬区大泉学園町に構えていたとは何かの縁でしょうか?)の『朝富士』をお引き受けいたしております。
絵本体は横約40センチの6号相当と小振りでありますものの、日が昇り始めたばかりの朝焼けに覆われた山腹全体が薄く淡い桜色を放ちつつまた微かに輝く(冠雪の反射と混じり合っている?)描写が、美しい山肌の滑らかな質感と画面の立体・奥行き感がサイズ感を忘れさせ、見る者の目を捉え魅了します。額越しとなりますが全体を見渡してみて筆跡がまるで認め難く、絵画表面は昔の家屋にあった「砂壁」の如き状態を呈しておりまして、細かい粒子が夥しく振り撒かれているよう。これは果たして直筆の本絵なのか、あるいはリトグラフや版画の一種なのかを判定、明言しかねますが、なんにしても金/銀泥かプラチナか何か(どうやらパールを用いた線が濃い)の微細な着色粉を蒔くか吹き付けるといった、巧妙、特殊な手彩色を、仕上げとして施しているのではなかろうかと素人は漠然と推量してみるに留まります。
清水規は題材として諸寺院(金閣寺、金剛輪寺等)と並び富士山を様々な姿で相当な枚数描いて来ており、双方とも人気が高いそうなのですが、殊今回の幻想的で異彩を放つ『朝富士』は彼の他の富士山作品群(朝焼けの濃い紅に染まる『赤富士』たちが特に著名)とは一線を画し屹立する、独特な、独創的な1枚(青白み帯びた『黎明富士』が強いて言えば近いのかも)と呼べるのではないでしょうか。本当に別格の一作だとしますと技術的な側面と制作の背景そしてその今日的評価・価値に一段と興味が湧いて参ります。
団体には所属せず、いわば独歩で無頼の一匹狼的に創作活動を続け、百貨店での個展開催を主戦場とされ、21世紀の日本画を背負い牽引するものと嘱望された清水規ですが、ここ10年くらいの動向、消息がどうも判然とせず(公式サイトも更新が停止している模様で)、近況や近作を知る事が出来ず健在でいらっしゃるのかどうかと心配されます。なおご子息の清水知道(1992~)が父の助手を経て若き日本画家として一本立ちしておりますが(父に倣ってか、なかなかの多作家と拝察)、今回の作品はどことなく~穏やかさ、柔らかみが表出して~その知道氏の作風に近いものを感じさせます。
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