北見隆のリトグラフ (一部に手彩色)『遅刻』を武蔵野市にて買い取り致しました
1952年生まれで、1970年代後半からイラストレーターとしてのキャリアを重ね、国内外で各種の賞を受賞、特に出版物の装丁を数多く手がけられていることでよく知られます、芸術家の北見隆の2005年作品『遅刻』を最近買い取りさせていただいております。近況としましては宝塚大学の教授として教鞭を執られますと同時に、立体作品を含め、メディアや手法・技法に囚われない制作活動を継続されています。過去作品群を一瞥しますと確かに、象徴主義や神秘主義、新ロマン主義~シュルレアリスムといった近代西洋絵画の諸スタイルが混然一体となった(宗教性は希薄な)幻想的寓意絵画が多く見受けられる気がします。
本作は、見る者にユーモアとペーソス、それに人間の心の暗部を感じさせる、なかなかユニークな作品、一種のアフォリズム絵画です。ダークなブルーとグレーを基調として、誰でも一度ならず経験したことのある、大事な約束に遅れてしまった・を破られた、待ち合わせした二人の心象風景が、動物に擬態されて表現されております。待ちぼうけ食らった左手の方が、内なる怒りと落胆によって鵺 (ヌエ) か何かにメタモルフォーゼしており、対して右手の遅れて侘びの握手を求める方にも変容が起こり、馬の尻尾のようなのが生え始めております(疾走して馳せ参じたことを象徴?)。絵柄からは一応和解が成りそうなのに救いがあるといえますね。
なんと5部限定のリトグラフ、市場に出回ったものとは考え辛いです。裏にさっと書き足されている、ジャン・コクトー風の女の子のイラスト、ペン画が、ほかに献辞などは見当たりませんが、一層本作品のプライベート性を増強しているようです。
この版画を観て思わず当方は、私的な約束には敢えて5分くらい遅れていくのが相手への配慮、礼儀だという風に考えていたこともあったな、若かった~ (;^ω^) と苦々しく思い出した次第。そこでこれを時間厳守の必要性を感じつつもついつい破ってしまうという貴兄に捧げるとしましょう、「遅刻禁止」と自戒する為に本作を寝室などに飾られるのは如何でしょう?
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