平安象彦 (八世西村彦兵衛) 作 長寛写 牡丹唐草文 喰籠 を店頭販売しております
前身である象牙屋として寛文元年(1661年)に創立、折しも今年の正月には十代めが誕生・襲名しております、長き歴史と奥深き伝統を誇ります京漆器の老舗である象彦からかつて世に送り出された、『長寛好 砂金袋形 喰籠(じきろう)』を店内にて販売いたしております。
製作は八代西村彦兵衛、漆器貿易の先鞭をつけたことや京都蒔絵美術学校の設立でも知られるようです。本品は、江戸末期に名を馳せた佐野長寛なる名工による名作のひとつとされます、牡丹唐草(富貴草)文が豪壮に蒔絵にて散りばめられた菓子器(喰籠)を模したもの。牡丹唐草は大陸伝来の吉祥文様のひとつ、蓋の内側と本体の底には冨と貴の文字が図案化されて書き込まれており、目出度さは一入。直径18センチほどの大きさで、表向きは茶席での棚飾あるいは菓子入れとしての用途が主とされますが、大きめの丼か小ぶりのお櫃としても使えそうです。
「原作者」の長寛(1794?~1856?)がかなりの変人、奇人、異才の漆工人であったようで、気の赴くままに佳品、優品を作って見せては世の好事家たちが競ってそれらを求め珍重したとのこと。自身の漆芸の独創的で高度なことに加え、中国伝統の様式美を日本好みに絶妙にアレンジを施すセンスの高さが受けたのでしょうか。少し空間恐怖症が窺われる構成には映るものの、確かに今日的な視点でも十分に新鮮さと斬新さを感じさせる意匠であります。
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