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東京西荻窪アンティーク道具屋慈光の日々

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ヤフオク!に出品した、無名詳細不詳の鳴子系伝統こけし二体について

工人大沼誓比定 推定大正早期作 無在銘鳴子系こけし古品古作2点 並置対照比較画像

小生の事前の探査能力が及ばず、不本意なまま苦汁噛み締めつつ、在銘無しの鳴子系古作、古品として、慈光公式ヤフオク!に出品せざるを得なかった、一瞥からして古い伝統こけし2本(出所は共通、眼差からはじまって全体に漂うクールな佇まいに魅かれます)について、ずぶの素人乍ら調査・探索を続けた末に、持説として一応合点の行く納得出来る結論に到達出来たようです。そこで僭越、微力ではありますが入札を検討される方々などへの配慮と便宜の提供をと鑑みまして(煽る意図は毛頭ございません; まずは何を措いても出品者として最低限の務めと責任を真摯に果たすべくことと、次いでは皆より公正、適正かつ正当なる評価を頂くに資することを、ひたすら愚直に目指したに過ぎませぬ)、畏れ乍らオークション説明の補足かたがた得られた情報と解釈につき拙文にてご報告を申し上げることといたします。

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大寸のもの (0235) も、地蔵型と呼ばれます小ぶりの方 (0236) も、結論から申さば、鳴子系工人でありました大沼誓 (1890~1960) の手になるものであり、絵付・意匠からおそらくはまだ若い(熟練以前の)大正時代初頭に作られたものであろうと推定されます。

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現品の撮影段階に於きまして既に、比較すると頭頂部の模様が殆んど双方一緒なのに着目し同一作家によるものではあるまいか?と手前は仮想しており、また同時に両こけしに共通して明瞭で際立った特徴だなぁと思い非常に気になっていた諸点がありました。すなわち、太い両わき髪(もみあげ?)の垂れた下毛先が沢山に分岐した実に細かい筆致で描かれていること、目(黒目)が丸々とクッキリとし非常に大きいこと、大きめの鼻がほぼ完璧にアルファベットの『U』文字を成していること(一筆なのも見逃せない)、そして胴模様の花文(横菊)が焔の立ち昇るが如き上向きの相似形で上下配置の二つだけ(本流は三つが多くかつかたちを変えがちのよう)であること、といったあたりでした。

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これらの要件を揃って満たすこけしが何処にないものかとネット上であれこれと捜し回ったのですがそう簡単には見い出せず非常に難儀いたしました。比較的容易・単純にすわ岡崎仁三郎~斉のラインかと一旦は思われもしたものの、どうもディテールも雰囲気も合致せずシックリしない。他にも候補者として幾人かが浮上しては却下となりました、そのなかでも誓の(ふたりめの)師匠筋となる「高亀」こと高橋亀三郎(上のアトリビューツに関して最大のインフルエンサーには違いなさそう)の存在には早くに辿り着いてはいたものの、明治末に除隊後の短期間だけの弟子入り(奉公?)であったことにカモフラージュされたか運悪く即座には誓に行き当たることが出来ぬままでした。うむむこれぞまさしくこけしの闇か魔境に彷徨い込んでしまったかとの心境に陥り、些か鬱屈しつつも反面で魅了されているのかもなと内心満更でもなくこのパズル解きか迷路回りを大層面白がっている自分にハタと気付くのでした。

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折を見つつ数日右往左往と一進一退の追究、探索を続けまして、紆余曲折を経て艱難辛苦を乗り越え遂に迷宮を脱出です。トンネルを抜けた先にあったのは、4年余り前にヤフオク!上にて、背の低い地蔵型の方と極めてよく似た、しかもサイズの一緒のもの、しかもこれが三十万円台後半の高値にて取引されていたと判明し、そこからは芋蔓式に知見が拡がり照合が進み、上の推論・結論に至った次第であります。心底驚嘆、驚愕すると同時にようやく心中のもやもや・脳内の煩悶が解消されて好奇心も満たされ達成感と安堵、平安とを得ることになったのでした。

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惜しむらく今回出品の2点は保管環境+経年によりいずれも緑色がほぼ綺麗に消し飛んでしまっておりますことを筆頭として、状態面が上記の高額落札品には大幅に見劣りしますのは歴然です。しかし、大寸のほうは両目が丸々と見開かれた、得も言われず吸い寄せられそうな純粋無垢でつぶらな瞳(ありふれていそうで存外とあまりない; 透徹し見据えたような眼差しは、一寸 all-seeing eye になぞらえたくなる)を備えており、もしかすると大珍品あるいは一大新発見といえる可能性ありやもとほのかに感じるのを抑え切れずにいます(別の誓属性というべき、決定的な特徴であるとされる鉋溝への朱染めが雑であるのをお見逃しなく)。対して地蔵型の方は、上の旧落札品に比べ、お顔の筆入れ描線が良く言えば一層慎重・丁寧というか、臆しつつ引いたのではないかという位に拙く・硬く映り~両まゆのラインに顕著か~、其の為か極めて素朴、原初的な印象を抱かせて止まず、これまたあくまで私見・直観でありますが、先の高額品より更に年代の遡る~未だ修業時代の?~古い作(習作?)なのではないかと想像を逞しくしてしまいます。

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かくして、憶測に満ちた我田引水とも看做し得る比定、同定の作業に基づいた、いかにもいち門外漢による甘い考察展開だとの誹り・批判を被る危険を憚らず、2本ともが大正期に作られた~名工がまだ大成する前に草創・雌伏期に制作した~、正統鳴子系こけしにとって歴史的観点から貴重、重要な作品であろうと判定いたす次第です。
尤もこの特定仮説の記述全体が当方の一方的な思い込み・決め付けに過ぎずまったくの誤解、曲解、誤判定いや妄想ですらあるという懸念は留保されてしかるべきと認めるに吝かではありません。現に随所で実証・説明不足であります所と併せまして、良識あるブログ読者諸兄にあらせられましては、是非とも手前が参考にさせていただいた下記情報ソース等並びに世に定評ある資・史料や書籍など諸々と照らし合わせ十分にご検討をいただいたうえで、究極最終的には各自のご判断にすべてをお任せ申し上げる他は御座いませぬことを、但し書きとして言い訳がましくはございますが重々念押しお願い申し上げつつ、この徒然なる駄文を締め括ることとします。 [yk]

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【参 考 (必見必読)】
・ 第16夜:ヤフオクの極美古作(最終回): こけし千夜一夜物語Ⅱ
http://fukujyusoan.moe-nifty.com/kokeshi_fan_night2/2015/08/post-0156.html

・ 大沼誓 | Kokeshi Wiki

大沼誓

 

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