オリベッティ製タイプライター『ヴァレンタイン』を店頭持ち込みにて買い取り致しました
外箱/ケースの形状から、「赤バケツ入り」との愛称で呼ばれる、今だ名機との誉れ高きタイプライター、伊オリベッティ社が1969年に世に送り出した『ヴァレンタイン』を、先日直接店頭にお持ち込みいただき買い取りさせていただいております。
オリベッティ社は1908年創業、2代目社主アドリアーノの下で、タイプライターの製造と販売の事業に於いて他の追随を許さない繁栄を築きました。しかし戦後にはコンピュータ開発分野に手を拡げるものの不調で、1960年にアドリアーノが死去すると、同族経営による問題が噴出するなどして、会社経営自体が危機に陥りました。そこでイタリア財界からの救済(1964年)を受けて再建を模索する只中で作り出されたのが、このヴァレンタインであったのでしょう、いわば起死回生(窮地の徒花?)の一作という存在であったのかもしれません。
ハッとさせる全面深紅のボディ色(およびキーなどの黒との清冽なまでのコントラスト)と、随所で人間性と機能性が調和したフォルムは、著名なインダストリアルデザイナーであるエットレ・ソットサス Ettore Sottsass が1969年に具現化したもので、半世紀経った今日の感性でも新鮮でかなり強いインパクトがあります。
今回の品は外箱蓋部分の刻印に依りますと、意外なことにスペイン-バルセロナ工場製造と判読されますが、世界各地に工場があったというオリベッティの製品とすれば特に驚くことではないのかもしれません。なお当社は現在はテレコム・イタリアの傘下にあって、システムソリューションの事業を運営する会社となっており、戦後企図したコンピュータ開発の事業はおろかタイプライター事業とはもはや無縁となっています。
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